市原ひかり “Dear Gatsby”

Ichihara gatsby

市原ひかり“Dear Gatsby” (Pony Canyon 2014)

市原ひかり − トランペット

宮川純 − ピアノ、ローズ・ピアノ、シンセサイザー

清水昭好 − ベース

横山和明 − ドラム

デイビッド・ネグレテ − 朗読

コンセプトアルバムは、コンセプトそのものが喪失してしまったり、音楽がへつらいわざとらしくなってしまう危険性をはらんでいる。しかし市原ひかりのコンセプトアルバム、“Dear Gatsby” はそんな落とし穴を避け、F.スコット・フィッツジェラルドの代表作『ザ・グレート・ギャツビー』に捧げるすばらしいモダンジャズの11曲を完成させた。近年公開された同小説を脚色したリメイク映画で市原とこのバンドがサウンドトラックを担当しなかったのはとても残念だ。もししていたら、小説の核心に迫りながらもジャズの心を失わない、すばらしい音楽が市原とバンドから奏でられていた事だろう。

明らかに、市原はこの小説のファンだ。その叙情性や誠実さ、ロマンスに押し流され、全てが曲に流れ込む。彼女自身が作曲した6曲、バンド作の3曲、そして英語による小説の朗読は曲に織り込まれ、アルバムにおける物語の流れが見事に作り出されている。彼女がそれぞれの曲へのインスピレーションとしてチョイスした小説の引用(きちんと英語と日本語両方でCDブックレットに記載されている)は小説の進行をたどり、各曲が物語を語る上での骨組みや原動力となっている。

市原がこの小説をバンドメンバーに宿題として手渡し、物語を心の底から理解するよう求めた事は想像がつく。彼らは確かにその通りだからだ。彼女はこの小説をジャズ組曲にするプロジェクトを大学か高校で初めてこの小説を読んだ時から考えていたに違いない。それは確実に思い描かれやり遂げられた。慎重な計画というより深い感動によるものだ。

最初の2曲、“You Must Know Gatsby” と “Old Sport”は楽観主義を誇張する。小説の冒頭と同じようだが、悲劇の予感がメロディやソロのパートに織り込まれている。これらの曲は小説の象徴的要素の複雑性を音楽的に反映している。“Did You See the Green Light”は叶わない願いの象徴を見つめる悲しみを表現している。“Can You Repeat the Past?”はジャズに対する愛の熟考でありながら、音信不通の恋人へのものでもある。

デイジーが物語に登場すると、“Waltz for Ms. Baker”は繊細さと混乱と愛の息苦しさの全てをもたらす。“The Love Nest”は現代に居ながらにして1920年代に連れ戻してくれる。小説の引用を織り込む事は曲のトーンや意味を決めるだけでなく、フィッツジェラルドの散文と熱心なジャズグループの心を込めたサウンドを橋渡しする。これらの曲は素敵なもくろみもあるが、豪華なメロディーの演奏や独奏として自立している。

下手な人の手に掛かればこれらは全てバラバラに崩壊していたかもしれない。しかし市原とバンドは一つ一つの旋律ですばらしくやり遂げた。ジャズと文学が完全で確実に噛み合っており、ここまで興味をそそる例を探すなら、シェークスピアを基にしたデューク・エリントンの組曲“Such Sweet Thunder”までさかのぼらなくてはならないかもしれない。小説と同じように、このCDはあなたに恋をしたくさせる。音楽と朗読により見事に語られている物語の美しさへの理解と学習と楽しみがそうさせるのだ。

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Miki Toshio Front Page Orchestra, Stop & Go.

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